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長崎市立野母崎小中学校にて未来の昔話ワークショップを実施しました
2026年2月19日、長崎市立野母崎小中学校(青潮学園)にて中学3年生を対象にワークショップを行いました。ワークショップの名前は、「未来の昔話」。環境問題を童話を使って考えていくものになっています。

ワークショップの考案者は、長崎大学に通う佐々木文葉さん。一昨年の秋にPLABが主催するPeace Academy vol,02に参加したことからこのワークショップが生まれました。Peace Academyとは、受講生が自分と社会の接点を見つけ出し、これからの社会をより良くしていくためのアクション、はじめの一歩を踏み出してもらうプログラムです。受講生はそのアクションをMy Projectという形で約3ヶ月の学びの集大成として、卒業イベントで発表します。佐々木さんは、大学1年生の時に大学の先輩の誘いでこのPeace Academyに参加し、My Projectの中で以前から関心があった環境問題に向き合うことを決めました。佐々木さんは広島県出身で、小学3年生だった2014年に地元の近くで起きた土砂災害を経験、そして2018年、中学1年生の時には西日本豪雨を経験しました。災害時に同級生のご家族が危ない状況にあったということを聞いて、環境というものへの見方が変わったそうです。
佐々木さん「自然は私たちに恵みをもたらしてくれるものでありますが、反対に私たちの脅威になり得るものだということをこの災害で間近に体感して、環境問題をより深く知りたいと思うようになりました。」
その後高校でプランクトンの研究をするなど独自の視点で環境問題に向き合ってきました。
My Projectで環境問題をテーマにアクションを起こすことを決めた佐々木さんが大事にしていたのは、面白おかしく環境問題にかかわってほしいということでした。環境問題といってもその要因やその結果引き起こされる問題もさまざまです。多くの人が難しそうと距離をとってしまう問題に「面白さ」をプラスして関わりやすくしたいという思いがそこにはありました。環境問題と何をかけ合わせたら良いか、佐々木さんが初めに考えた案は、「アドベントカレンダー」でした。アドベントカレンダーとは、クリスマスまでのカウントダウンを楽しむためのカレンダーで、日ごとの窓の中にはお菓子や最近ではコスメなどが隠されています。佐々木さんはこのアドベントカレンダーのワクワク感を環境問題を考える際にも活かせないか考えました。そして、地球温暖化を緩和させるための地球寒冷化カレンダーを作成しました。日ごとに、「ご飯を残さず食べよう!」などの小さなミッションが書いてあり、それを達成すると地球からのお手紙をもらうことができる仕組みになっています。実際に作ったカレンダーは佐々木さんの友人に試してもらい、「地球温暖化を身近に感じた。」や「いつもよりご飯が美味しく感じた。」などのフィードバックをもらったそうです。このカレンダーについてPeace Academyの卒業イベントで発表してくれたのですが、ここで終わるのはもったいないということで、卒業後もPLABメンバーの協力も得ながらプロジェクトを続けることになりました。

その後のプロジェクト会議の中で、当初はカレンダーの商品化なども視野に入れていたそうなのですが、自分がやってみたいのは商品を生み出すことより、ワークショップという形かもしれないということで、その方向で進めることになりました。ワークショップではどのようなアプローチの仕方があるか何度も議論がなされました。その中で多くの人にとって、とっつき難い環境問題を誰もが知っていて、かつ物語の中で自然が多く描かれる「童話」という切り口から考えることでハードルを下げることができないかという案が出て、未来の昔話ワークショップのアイディアのもとが生まれました。
その後会議や制作を進め、ワークショップを形にしていきました。Peace Academy 卒業イベントの約半年後の昨年4月には、高校生から社会人の方を招いて未来の昔話ワークショップの体験会を実施しました。


昨年4月の体験会でもらったフィードバックをもとに、その後もブラッシュアップを重ね、ワークショップの完成版として今年2月に中学生に向けてのワークショップを実施しました。未来の昔話ワークショップでは、童話の世界で環境問題が起こったら?という前提をもとにおとぎ話を創ってもらう構成になっています。参加者は、まず「童話カード」と「環境カード」を引きます。童話カードには、桃太郎や浦島太郎などの幼少期に誰もが一度は触れたことがある童話の一節が書かれています。一方、環境カードには「水質汚染」や「地球温暖化」などの環境問題が事例とともに載っています。この二つのカードを掛け合わせて、童話の中でこの環境問題によってどのようなことが引き起こされるのか新たなストーリーを考えていきます。ストーリーを考えさせた後、参加者に実はこれは物語ではなく実際に現実で起こっていることだということを伝え、ハッとさせ、具体的には世界でどのような事例が起こっているのか調べ学習をさせる流れになっています。そして、最後は問題を解決するためにストーリーをどのように変えたら良いか解決策を考えさせて、そしてそれを解決できるのは参加者自身であることを伝えるものになっています。


佐々木さんがこのワークショップでこだわった点は、知識を必要とせず、環境問題に対するハードルを低くするということ、そして楽しみながら学ぶことができるということでした。
佐々木さんの想いのとおり、実際に体験した中学生は同じ班の仲間と和気あいあいと話しながらワークを進めていたといいます。オリジナルのストーリーを考えるのに苦戦している班もありましたが、そのような班には佐々木さんや先生がサポートに入って一緒に考えました。佐々木さんは、このワークショップは、先生の学び直しの機会にも使えるのかもしれないとも感じました。
中学生とのワークショップを通じて佐々木さんが一番驚いたのは、環境問題が他の社会問題とも繋がっているということでした。
佐々木さん「桃太郎と大気汚染を掛け合わせて考えてもらっていた班だったのですが、大気汚染のせいで公園で遊ぶことができず、その結果家でTikTok中毒になるというストーリーを考えてくれた方がいて、環境問題が他の社会問題も引き起こしてしまっているという新しい視点をくれたなと思いました。」

ワークショップの完成までを振り返り、このように話してくれました。
佐々木さん「アイディアを形にするのが難しく、時間がかかりました。童話カードや環境カード、ワークシートを準備する際には教育について学んだことのあるPLABメンバーの力も借りながら完成させました。」佐々木さんのアイディアをもとにPLABメンバーがさまざまな意見を出し合った結果、佐々木さんも納得できるものが完成しました。
最後に佐々木さんが伝えたいメッセージをお聞きしました。
佐々木さん「グレタ・トゥンベリさんのような環境問題に対して声をあげるような若いリーダーもいれば、アメリカのように環境問題に対して後ろ向きな姿勢をみせる国もあります。私たちが住む地球の未来は、今地球に暮らす私たちにかかっているということを頭の片隅でもいいから考えて欲しいです。
また、核兵器問題を学ぶ中で、核兵器と環境問題が密接にかかわっていることを知り、個別に問題に対応していくのはもちろん大切ですが、一気に社会課題を全て変えていく必要があると考えるようになりました。人間だけではなく動物や植物など地球に生きる多様な生命の形が守られる世界を作るにはどうしたらいいのか、またそのために自分は何ができるのか模索していきたいです。さらに、私たちはどんな世界を目指すのかという大きな問いの答えも見つけていきたいです。」
環境問題ーそれは地球に住む誰もが無関心ではいられない差し迫った危機であると思います。しかし、環境問題という大きな問題に立ち向かうとき、私たち一人ひとりの力は小さく感じてしまうかもしれません。佐々木さんも以前はそう考えていました。
佐々木さん「それでもワークショップを開発して、実施して世界の変え方の片鱗が見えた気がします。それは、他者の力を借りて一緒に知恵を絞ることだと思います。」
この佐々木さんの気付きは、私たちがどのような世界を目指すのかという問いの答えに繋がっていくと信じています。